・・・おはなしのおはなし story 4 ~ おはなしの世界

 

屋根がお庭の家からはじまるおはなしの世界

自分でかんがえてきたお話を絵にしていくのは、実際に家を建てたり、大きな村や山を自分で作るみたい。このおはなしには、山にあるおばあの家と谷にあるおじいの家、それからごめたんの書庫に行く入口、

 何度描きなおしても納得できなくて、形にしなくてはという思いで、立体物を思いたちディオラマを作りはじめました。実際に立体にすれば、バランスや構造をもっと考えることができると思ったのです。

この家、どんなふうに作ったか?はポチしてください。
この家、どんなふうに作ったか?はポチしてください。

この家のおばあを描き起こすきっかけに描いたのは、出展のときにお会いした作家先生で、ミステリアスなブラックのすてきなドレスをお召しになっていたのが印象的だったのでスケッチをさせていただきました。実際はすごくスマートで素敵な自立した女性。

牧歌的な場所で、驚くほどおしゃれな生活をしている方は実は多いなあ、と最近思うことが多いので、独得なセンスを持っている高齢な女性のエッセンスがほしかったからです。

一方、おはなしのおばあは、不思議な動物たちと暮らす人です。ちょこまかと動くしゃべらない小さなおばあちゃんです。私自身おばあちゃんに近い年齢になってきたので、私や他のおばあちゃんたちの要素も加えて、アクティブばあちゃんになりそうです。ストーリーの中で、おばあちゃんは、おおむねごめたんの家にいます。おじいは大きな人たちのお世話をする谷の家に住んでいます。おじいとおばあは、元気ですから、ユニークな仕事をしていて、別々の家に住んでいます。私は、登場人物を一人ひとり独立させたかったので、家族や夫婦ではなく、みなそれぞれに別々の存在として描くことにしました。

(2020.1更新)


おはなしの中では、登場する動物さんやいろんな人たちの世界はどんなかしら。どんなところに住んでいるのかしら、イメージして描いていくのか、日々、ぼんやりと想像したり、描いてみたり。どのように絵本の中で描写するのか、それはそれは楽しい作業です。

大きな手のママと

足の大きなパパと

たびのひと

大きなひとたちは、大きなものを運んだり

作ったり、なおしたりするお仕事の人たち。

大きな時計を動かすときには、

文字盤にする木を並べかえたりする。

 

行ったりきたりする道にまんなかにここみのいえはあります。

大きなひとたちは、ここみのいえを踏まないようにいつも大切にしています。

雨あがりの朝は、ここは浅い池になって、大きな人たちは歩かないので、

静かです。大きなママと暮らしている大きなトリさんが飛んできたり、

小さな仲間たちは、集まって水の中の生き物と遊んだりします、

3人の大きなひとたち

 
 

大きな手のママは、手のひらに小さな生き物を隠しています。歌をうたってくれるこの生き物は、遠くの雨雲を喜ばせているよ。そして、大きな手で、ごめたんの書庫のある家もつくってくれます。大きな足のパパともう一人。3人の大きなひとは、シュバルさんのお城に立っていた、3人の大きな人からイメージ。

大きな手のママのために手のデッサン
大きな手のママのために手のデッサン

「シュタイエルマルク州ブルマウ」

・・・というところ。

この村の設計プランを立てたのは、日本でも大変有名な芸術家の、フンデルト・ヴァッサー氏です。日本にも某テレビ局にオブジェが、大阪にゴミ焼却場が作られたことは話題になりました。大変特徴的なアートと建築を手がけたヴァッサーさんの美術館は、ウィーンにあって、1996年5月立ち寄ることができました。多少交通の不便な場所にあるので、少し余裕のある旅程でないと立ち寄れないかもしれません。このときは、私は夫と一緒だったので、余計な不安はありませんでした。

 

市営住宅も有名です。アパートメントのいたるところから木々が生えていて、コンクリートの市街地の中にあって、たくさんの鳥のさえずりが反響する面白い建物です。私は、市営住宅の観光センターと美術館には訪れることができました。そこで見たジオラマのユニークな村や町に見入ってしまいました。

 

「世にもユニークなリトグラフ風の絵画が並んでいる。色の使い方も個性的で強烈、(中略)3階の一番奥にヴァッサーの村の立体モデルがあった。広大な山や川を切り開いて平らにならして四角い建物を建てるのではなく、あたかも丘陵地帯の起伏を生かして家々がつくられているように見える。家は、住む場所であると同時に、屋根の上は歩いて越えるための丘ですらある。フンデルト・ヴァッサーハウスからうっそうと茂っていた、木々とさえずる鳥の意味が分かったような気がした。」

私は、このときの驚きの感覚を忘れることができずにメモに残しました。直線を廃した内装や建物から生えているように見える植物に強く心惹かれました。そして、それから15年以上もたってから、大きな重たい作品集を日本で買いました。おはなしの家の発想は、この時の記憶がまずありました。私は年賀状に同じような家を、毎年干支を変えて描いていたことがあり、一度きちんと描きおこしたいと思ってました。

有名なウィーン郊外のごみ焼却場にも行ってみました。電車や路面電車(バスだったかな)を乗りついで、行けるところまで行ってみましたが、そこからは徒歩でかなり時間がかかりました。迷ったのか、間近に近づくことはできず、途中で断念して引き返しましたから、建物までたどり着くことはできませんでしたが、橋の上から、遠方ながら観ることができました。あの特徴的な煙突は、かなり遠くからでも、大きく見えるのですが。

その後、ヴァッサーさんの「シュタイエルマルク州ブルマウ」のその後の写真を(現在サービス修了の)Google+のサークルの方の投稿で観ることができました。シェアさせてもらっていました。作品集で観たときより、建物にも木々が茂っていて、素晴らしい村が出来上がっています。未来に夢が完成していく想像力の素晴らしさに感動してしまいます。

なんだかとてもうれしくて、ホロッとしました。 2013.8.31 


 このウエブサイトに掲載されている、文章・写真・ストーリーを含むコンテンツを利用した、

類似サイトや無断転用等はお断りします。